クロガネ・ジェネシス

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第二章 ルーセリアフォレスト

 

巨人ギガントスライム



 それから数時間が経って、俺はその資料を見つけた。

 精神寄生虫《アストラルパラサイド》。そう名づけられた紙束を。

 あまりにも量が多いため、俺は必要な項目だけ斜め読みし、残りは時間があるときに読むことにした。

 とはいえ、俺がエルマ神殿に戻ってやるべきことは分かった。後は俺次第だ。

「よし、1度上に戻ろう。今後のことを話し合わなきゃいけないしな」

「零児」

「ん?」

「火乃木……私のこと嫌ってる」

「……」

 確かに、火乃木はあまりシャロンに対して友好的ではない。態度を見ていれば分かる。現にそれが理由で別行動を取ろうとしたのかもしれないし。

「あまり気にするな。俺からちゃんと言っておくから」

「私……怖がられてるのかな?」

「火乃木が何を考えているのかは俺にもわからない。ただ、お前のことを怖がっていると言うのとは違うはずだ」

「どうして?」

「……あいつも俺も……ある意味お前と同じだからな」

「……?」

『ウオ――――――ッ!!』

 !? なんだ今の声は?

 低い、重低音。獣のような咆哮だ。

「零児!!」

「ああ、上からだ!」

 俺達は会話を切り上げ、地下室から一階へと向かう。

 俺達がいた地下室へ向かう階段は屋敷内で隠すように存在していて、1階のホールから離れている。何が起こっているのかはわからない。だが、何かが起こっているとすれば多分ホールだ。

 そう考える根拠は、この地下室にまで聞こえるほどの咆哮が聞こえると言うことはそれなりに声が響くようなところから声が発せられていると言う可能性を考えたからだ。

 ここに至るまで、俺達が戦ってきた中で唯一倒していない存在。

 それは恐らく……。

 1階ホールにたどり着いて俺はその正体を知った。

 赤いスライム。そう。多分森で俺を殴り倒した奴の正体。それが1階ホールで火乃木とネルを相手に戦っていた。

 火乃木は魔術師の杖を取り戻したのか右手に魔術師の杖を握っている。いや、それだけじゃない、亜人としての特徴である丸い角も赤い髪も翼もなくなり、肌も浅黒いものから肌色となり、人間としての特徴を取り戻している。

 変身のカードがここにあったのか? いやそんなことをじっくり考えている時間はない。

 今問題なのはあの赤いスライムだ。その姿は今まで見たものとは違っていた。

 大きさが桁外れに違う。今までは人間の等身大くらいの大きさだったのに対し、こいつはホール2階の吹き抜けに顔が出てくるほど大きい。もはや巨人だ。

 そして、その赤いスライムの体中に人間の骸骨が浮かんでいる。だが、そこに頭蓋骨は1つとしてない。

 シャロンの力で殺された黒服の男達。その肉体を吸収したとでもいうのか?

 火乃木とネルはその巨体から何とか逃れながら必死に攻撃を繰り出す。

「アイシクル・ブラスト!」

 火乃木は右手に魔術師の杖から白い光球が現れ、赤いスライムに着弾する。その光球が着弾したと同時に赤いスライムの一部が一瞬で凍りつく。

 しかし、ほんの一部凍ったくらいでは奴の動きは止まらない。

「ヴォルテックス……」

 ネルが魔術のキーワードを唱える。そして、さらなるキーワードと供に魔術が解放される。

「マグナム!!」

 次の瞬間、眼に見えぬ渦が発生し、巨大な赤いスライムの腹(?)に、風穴が開く。

 しかし、たちまちその風穴も閉じてしまう。

「資料に書いていた通りだな……。さて、俺も参戦しなければな……!」

「零児! 私も……」

 俺はシャロンにあの赤いスライム、もとい精神寄生虫《アストラルパラサイド》の資料を渡す。

「零児?」

「シャロン。お前は戦わなくていい」

「で、でも……」

「レーザーブレスなんか使ったら体力を消耗するみたいだからな。安心しろ、俺達は必ず勝つ!」

「………………(コクン)」

 シャロンは頷きで返す。俺は巨大な赤いスライムに目を向けた。

「火乃木! ネル!」

「レイちゃん!?」

「クロガネ君!」

「奴の弱点は炎だ! 炎系魔術を使え!」

「わかった!」

「まいったなぁ。炎系の技は持ってないんだけど……」

 俺は2階の吹き抜けから右手を突き出す。

「片手でどれだけ作れるかな……」

 そうつぶやき俺は叫ぶ。

「剣の弾倉《ソード・シリンダー》!!」

 俺の右手の先から白い光が発生し、直後大量の剣が出現し、高速で飛んでいく。

 それら全てが赤いスライムに突き刺さる。

「散!!」

 叫ぶと同時に突き刺さった剣が爆発し、スライムが飛び散る。

『グォォォォォオオ!』

 そして、赤いスライムの動きが鈍り、人の形をしていたスライムはその姿を崩れさせ、床に水溜りのように広がる。

「2人ともこっちに!」

 火乃木とネルが2階の吹き抜けに上ってくる。

「火乃木! サークル・ブレイズって言う魔術は使えないか?」

「まだ、修行中だから、上手く使えるかは自信ないよ?」

「構わない。俺達が奴の肉体をバラバラにするから、そのときに発動できるよう呪文を唱えておいてくれ!」

「わ、わかった!」

「ネルはなんか炎系の魔術は使えないか?」

「私も使えるのは風属性のしか……」

「そうか、なら……」

 とるべき手段は1つだな……。

「ネル、お前の拳と俺の無限投影による爆発で奴の体を徹底的に破壊するんだ」

「だけど、すぐ再生するんじゃないの?」

「ああ、だから火乃木のサークル・ブレイズで一気に焼くのさ!」

 奴が身にまとっている赤いスライムは精神寄生虫《アストラルパラサイド》の魔力によって守られている。ただ、単純に炎系魔術をぶつけただけではダメージが小さい。

 エルマ神殿で戦った時だって、ボム・ブラストによるダメージは大した事なかった。コイツ倒すにはスライムを爆散させ、魔力との結びつきがなくなったところを燃やすしかない。

 サークル・ブレイズは一定の範囲に炎の円陣を作り出し、その円陣の内側に存在するものを炎で焼き尽くす円陣系魔術。

 あれなら奴の肉体を一気に燃やし尽くすことが出来る。

「火乃木はサークル・ブレイズの準備!」

「うん!」

「それじゃあ、頼むぜネル!」

「OK!」

 そうやって会話している間に、赤いスライムは再び人の形を取り戻してくる。

「来るぜ……!」

 俺は全身に滴る冷や汗をこれでもかと言わんばかりに感じながら言った。

 倒せるのか……? コイツを……。

『オオオオオオオオ……!!』

 鈍い叫び声。赤いスライムの巨人がこっちを睨む。

 俺は自分の腰に下げている2本の剣を見る。剣を折る力をもった剣ソード・ブレイカー。そのうち1本に右手をかける。

「来るよ!」

 ネルが叫ぶ。俺の眼前には赤いスライムの右手が迫ってくる。

 俺はその右手にかけた剣を抜き、赤いスライムの右手に向ける。

 その剣には刀身がない。刃なき刃。俺は握り締めた剣に魔力を込める。同時に存在しないはずの刃が剣先から伸びて、赤いスライムの右腕に突き刺さる。

 刃は伸び続け、赤いスライムの右腕の中を突き進み貫く。

「散!」

 そして、赤いスライムの内部に突き刺さっていた刃を爆散させた。すると、赤いスライムの右腕は弾け飛び、スライムが床に飛び散った。

 刀身のない剣。本当は新必殺技のために用意していたものでこういう使い方をするために用意したわけではないのだが、致し方あるまい。

 まだ、奴の右腕を吹き飛ばしたに過ぎない。

 爆発の熱で多少はダメージを与えることが出来たかもしれないが、それでも与えられたダメージは微々たるものだろう。

 ネルが2階から飛び、巨人の顔面目掛けて拳を構える。

「ストーム・ブリット!!」

 ネルの拳が巨人の顔面を捕らえる。途端、巨人の顔面は一気に弾け飛び、辺りにスライムが飛び散る。

 ネルが地面に着地し、同時に俺はさっきと同じように刀身のない剣を、巨人の胴に向けた。そして、剣に魔力を込め、刃を出現させると同時にそれを伸ばしていく。

 巨人の胴にそれが突き刺さる。

「散!」

 同時にその刀身が爆散し、巨人の胴、腰より上の部分が粉々に飛び散る。

 多少なりともダメージを与えることが出来ていると信じたいところだ。

 しかし、飛び散ったスライムは未だうごめき続ける。巨大スライムの体を粉砕しただけではコイツを倒すことは出来ないのだ。

 俺は火乃木のほうを見た。火乃木は魔術師の杖を右手に持ち口を動かしている。呪文を唱えているのだ。  魔術師の杖が最もポピュラーな理由の1つに、杖そのものが使用頻度の高い魔術の呪文そのものを覚えることにある。その状態であれば、長い呪文を唱えることなくただ一言魔術の名前を叫ぶだけで発動することが出来る。

 しかし、より高位魔術になればなるほど、魔術師の杖そのものが呪文を覚えるのに必要な使用頻度も増えるし、呪文そのものも長くなる。

 火乃木が発動しようとしている魔術、サークル・ブレイズはほとんど使用機会のない魔術だ。当然杖にその呪文は記憶されていない。そのため、発動に時間がかかるのだ。

「クロガネ君よけて!」

「なに!?」

 ネルの言葉に俺は反射的に跳躍した。飛び散ったスライムが、俺目掛けて凄まじい勢いで跳んできたのだ。

 無数のスライムは再び1つの姿になろうと集まりながら、その近くにいる俺やネルに襲い掛かる。俺達はそれを回避しながらスライムを攻撃していく。

 そして、再びスライムは巨人の姿に戻った。

 奴の本体である巨大芋虫さえ見つかれば、一撃でケリがつくのに……!

「これじゃ、キリがないよ!」

 ネルが言う。確かに、これを繰り返していてはキリがない。

「だな、だが耐えるんだ! 火乃木の魔術が完成すれば倒せるはず!」

「OK」

 俺達は再び、巨大な赤いスライムを睨みつける。

 スライムの右腕が、俺とネル目掛けて伸びる。どうやら押しつぶすつもりらしい。俺もネルも脚は速い方だから、鈍足なスライムの攻撃などあたりはしない。

 だが、問題は奴に触れられないと言うことだ。

 奴は有機物である人間の死体を取り込んでここまで巨大化した。当然俺達だって奴の餌候補だ。触れられるわけには行かない。

 俺は再び無限投影で作り出した刀身を突き刺し、奴の胴を爆散させる。

 上半身と下半身が分かれ、上半身は地面に落ちると同時にその衝撃で辺りに飛び散る。

「ヴォルテックス・マグナム!」

 次の瞬間、ネルの攻撃がスライムの巨人の下半身部分に直撃し、スライムは再びバラバラに飛び散る。

 あの芋虫はどこだ!?

 本体である精神寄生虫《アストラルパラサイド》さえ倒せば、火乃木のサークル・ブレイズ無しでもどうにか倒せるのに……!

「クロガネ君!!」

「!?」

 ネルの叫び声がホールに響く。何事かと思ってネルの方を見ると、スライムがグニグニと変形を始めたのだ。

 1つになろうとするのではなく、変形。これは今までにないパターンだぞ。

 ここまで巨大化すると、特定の形に体を変形させることは難しいらしく、今まで奴はその姿を巨人と言う姿で表していた。

 だから、これほどまでに巨大になったスライムが何かしらの形に新たに変形しようとするのはそれだけで驚きだ。

 ついでに……。

 俺は飛び散った上半身部分のスライムを見る。ネルと対峙している下半身部分のスライムと同様、こちらもグニグニと自らの肉体を変形させている。

 自らの体が2つに分かれたことで、変形しやすくなったってのか……。

 俺の目の前で赤いスライムは今までの半分ほどの大きさの人間の男と同じ姿形に変わった。

 エルマ神殿で見た男と同じような姿に。しかし、その体は俺よりはるかに大きい。

『ン……ムムム……そうか』

 何だ? 何を考えている?

『コウカ? コンナ形ニナルノカ?』

 そう言うとスライムは自らの右手のひらを変形させて俺が今まで使ってきた剣と同じ形の剣を生み出した。

 その剣でスライムは俺目掛けて切りかかってきた。

「……クッ!」

 紙一重で交わし反撃に転じる。が、そうしようとすると、スライムは左手からも同様に剣を生み出し、俺に襲い掛かってくる。

 しかも巨体であるが故に俺の動きが見えているのか、かなりの速さで次から次へと攻撃を仕掛けてくるものだから中々隙がない。

 俺は回避に専念する。

 真正面からやりあったんじゃ攻撃に転じることは出来そうにない。俺は1度後ろを振り向き、思いっきり走る。

 そして、壁を利用して高くジャンプし、スライムの真上に到達したところで俺は再び無限投影を発動した。

 全長2m長の巨大な大剣、トゥ・ハンド・ソードを生み出し奴の頭目掛けて投げつけた。トゥ・ハンド・ソードはその全身を頭から串刺しにする。

「散!!」

 そして、爆散させた。すると、人型のスライムはその全身を当たりにぶちまけ再びバラバラになった。  そんなやり取りの最中、ネルの方をちらりと見た。ネルと対峙したもう1つのスライムは、いつか森で戦った恐竜、バグナダイノスと同じ姿をとっていた。

 俺は今倒したスライムが再生する前にネルの援護をするため、ネルと対峙しているバグナダイノス型のスライム目掛けて走る。

 無限投影の連続使用に剣の弾倉《ソード・シリンダー》まで使ったせいか、俺の魔力も限界が近づいている。

 まずい……。だが、だからと言って戦わないわけにも行かない。

 俺は跳躍と同時に再びトゥ・ハンド・ソードを生み出し、バグナダイノスの姿をしたスライムを横から真っ二つにした。

「クロガネ君!」

「今だ! ネル!」

「うん! サイクロン……」

 俺は着地し、その場から離れる。同時にネルの魔術発動のキーワードが唱えられた。

「マグナム!」

 すると、バグナダイノスの形をしたスライムはその形を崩し、衝撃で単なるゲル状の物体に姿を変えて飛び散った。

「ハァ……ハァ……こ、これでも……倒せてないの?」

「ハァ……ああ、これでもだめだ……」

 俺の言葉を裏付けるように俺とネルが倒したスライムは再び1つの姿になろうと集まり始める。

「クッソ……! 魔力も、もう残り少ないのに……!」

「同感だよ……」

 その時。

「レイちゃん!」

「火乃木!?」

「離れて!」

 火乃木の声と同時に俺とネルはその場から離れた。そして……。

「サークル・ブレイズ!!」

 火乃木の魔術が発動した。

 途端、飛びったスライムの周りで炎が発生し、その炎は円の形を描いてスライムを取り囲む。

 そして、円の内側にも炎が広がり、あっと言う間に赤いスライムを包囲した。

 俺とネルはその光景を見つめる。

 赤いスライムは瞬時に人の姿らしき形になると、その炎にもだえながら、人間の手のような形を作りだし、天を仰ぐ。

 その様がもがき苦しむ人間のようにも見えて吐き気を感じた。

 やがて赤いスライムは、その姿を消していき、同時にサークル・ブレイズの炎も消えていった。

 終わった……。

 思えば長かった。森の中に来てからここまで来るのに。ノーヴァスは死んでしまったが、代わりにシャロンを救うことが出来た。あとはエルマ神殿の事件を解決させるだけか?

「ハアァ〜〜〜……」

 俺は慢心創痍で大きくため息をついた。

「クロガネ君! まだ終わってない!」

「何!?」

 俺はネルに言われてもう一度、赤いスライムがいたところに眼を向けた。

 ほとんどが焼き払われたかに見えた赤いスライムは残っている。しかし、スライムとしての硬さがなくなっている。

 1つになろうとしても巨人の姿になることが出来ず、ほとんど水に近い形で激しく動いている。

 液状化しているとでも言うのか?

 そう思った時だった。液状化しているスライムがものすごい勢いで俺目掛けて跳んできた。

「うわっ!」

 俺は跳躍してそれを交わす。同時にスライムは行き先を見失い、反対側の壁にぶつかった。

 同時に壁を破壊しかねないほどの衝撃が発生し、俺達は目を疑う。これじゃまるで津波だ……!

 あんなものを食らったら……。しかも液状化しているということは大抵の攻撃ではびくともしないはず……!

「逃げろおおおおおおお!!」

 俺達は2階から急いで廊下に向かう!

 火乃木とネルとシャロンの3人は一直線に廊下の方へ向かい、俺もその後を追いかける。

 同時に俺の声に反応したのか、液状化したスライムは激しい動きで俺達の後を追いかけてきた。

 細長い廊下の中、俺達は必死になって走りまくる。

 全身が疲労している。そのためか中々スピードが出ず、ネルや火乃木達と差が出来たまま、それを埋めることが出来ない。

 後ろからは津波のような赤いスライムがものすごい勢いで押し寄せてくる。あんなものに飲み込まれたら一たまりもない!

 そう思った瞬間俺は、つまづき同時に地面に転んでしまった。

 疲労で足が……!

 ふざけんな! こんなところで死ねないのに!!

「レイジ!」

 シャロンの声が聞こえた同時になぜか赤いスライムの動きが止まる。

「……!? これは……」

 赤いスライムのほうを見る。そこには虹色に光り輝く壁が現れ、それ以上の進行を止めていた。

 だが、津波の圧力は相当なもので、すぐさまその壁に亀裂が入る。

 俺は急いで立ち上がり、ネル達の後を追う。

 ありがとう、シャロン。

 だが、逃げることしか出来ないなんて情けない!

 俺達はがむしゃらに逃げる。館の構造なんて完全に把握してない俺達はでたらめに進むしかなかった。シャロンのおかげで多少の時間稼ぎは出来たものの、そのスピードは圧倒的にスライムの方が速い。

 そのためか、俺達はすぐに追い詰められた。

 廊下を走って道なりに進むことしか出来なかったのだからそれも当たり前といえば当たり前だった。

 行き止まり。後ろからはものすごい勢いでスライムの津波が襲ってくる!

 シャロンがさっき作った光の壁のおかげで、ある程度距離がある。そして、今もシャロンの壁によって一定の距離を保ったまま持ちこたえている。だが、破られるのも時間の問題だ。

 破られたらあっという間に俺達は……!

「こ、このままじゃ……」

 火乃木が引きつった声をあげる。死の恐怖を強く感じて震えている。

 どうするどうするどうするどうする!?

 考えろ! 何か方法が……方法があるはず……!!

「レイジ……もう……!」

 光の壁に亀裂が入る。シャロンも限界が近い……。

 もう全員慢心創痍で動けないこの状況でどうすれば……そうだ!

「シャロン! バリア解除! 同時に全力でレーザーブレスだ!」

「……! (コクン!)」

 シャロンは一瞬目を見開いたかと思うとすぐさまそれを実行に移した。

 バリアが消え、スライムが津波のような速さで迫ってくる。

 だがそこで、シャロンのレーザーブレスが煌いた。

 まるで槍のように細いレーザーブレスがスライムの津波に突き刺さる。

 その瞬間、生モノを焼き焦がしたような臭いを撒き散らす。そして、レーザーブレスから発生した熱が、液状化したスライムを一瞬で蒸発させ、そのほとんどが吹き飛ばした。

 魔力が完全に消滅して、スライムはただの赤い液体になりあたりに飛び散る。

 そして、赤いスライムの本体。精神寄生虫《アストラルパラサイド》がその姿を現した。

 俺は残り少ない魔力で無限投影を発動した。剣を生み出す。

 そして精神寄生虫《アストラルパラサイド》に突き刺した。

 途端、精神寄生虫《アストラルパラサイド》がのた打ち回りその動きを止めた。

 今度こそ、本当に終わった。

「わ、私達……」

 ネルが慢心創痍といった感じで、言う。

「勝ったんだよね? 終わったんだよね?」

「……ああ。終わった……」

 そう。やっと終わった。

 俺達は赤いスライムの撃退に成功したんだ!

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